2013年11月25日月曜日

日韓関係の悪化で米国が戦略的試練に:中国牽制のため日本の軍備拡張を支持

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JBPress 2013.11.25(月)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39267

日韓関係の悪化で米国が戦略的試練に直面
(2013年11月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 米国は、アジア地域で中国と勢力争いを繰り広げるなかで、北アジアの2つの同盟国であり安全保障条約を結んだパートナーである日本と韓国の関係悪化にいよいよ懸念を募らせている。

 日本の安倍晋三首相と朴槿惠(パク・クネ)大統領は、2月に大統領が選ばれてからまだ正式な会談を開いていない。
 韓国は日本が隣国の植民地支配を十分に反省していないとして不満を抱いているからだ。

 朴大統領は今月の訪欧に先立ち、北朝鮮との協議を受け入れる姿勢を表明する一方で、日本との首脳会談を「無意味」と表現し、論争に拍車をかけた。

 一方の日本政府は、日本が見るところ、この問題について話し合うことや、高まる外交的緊張を和らげる対策に同意することさえ拒否する韓国の対応に苛立ち、憤慨している。

■アジアにおける米国の国益にとって最大の戦略的課題

 「この問題は今、アジアにおける米国の国益にとって最大の戦略的課題として浮上している」。
 バラク・オバマ大統領の1期目に東アジア・太平洋担当国務次官補を務めたカート・キャンベル氏はこう言う。

 中国はその過程で喜んで日本を刺激しており、中国の外交部長は先日、1909年に日本の指導者を暗殺した韓国の独立活動家、安重根(アン・ジュングン)は中国で「尊敬される人物」だと述べた。

 日本と韓国との間の歴史を巡る緊張は長年にわたる懸案で、日本の政治家が有罪判決を受けた戦犯を合祀する東京の靖国神社を参拝するたびに、決まって怒りの感情が燃え上がる。

 韓国は、安倍氏が昨年の選挙運動期間中に、日本がかつての植民地を「侵略」したのかどうかについて疑問を呈したことや、5月に閣僚が靖国神社に参拝したこと、大阪市長が日本政府の強制的な戦時中の売春は「必要」だったと述べたことなど、最近の一連の出来事を引き合いに出す。

 韓国外交部東北アジア局長の朴俊勇(パク・ジュンヨン)氏は、韓国政府は対日関係を「非常に重要」だと考えていると述べた。
 「我々は、この地域と世界の平和と繁栄に貢献すべきパートナーだ。
 しかし最近、日本の政治家の間に、歴史修正主義に基づく多くの発言や行動が見られる」

 ホワイトハウスの高官らは、米国政府は2カ国の険悪な関係を「憂慮」しているが、
 両国の仲裁することはできないと話しており、
 ある高官は
 「我々は、双方がこの問題に対する解決策を見いだせる環境を作り出したいと思っている」
と述べた。

 米国が仲立ちしていた日韓の軍事協力協定を2012年に韓国が土壇場で拒否したことからも明らかなように、日韓関係の破綻は、東アジアにおける戦略的プレゼンスを強固にしようとする米国の取り組みの妨げになっている。

■あくまで日本の責任とする韓国と、「韓国疲れ」の日本

 だが、韓国の高官らは、日韓関係の破綻に米国が失望していることは承知しているが、「間違った」立場を正す義務は日本側にあると頑なに主張する。

 日本は、植民地支配の問題を解決する際、昔ながらのやり方に頼ってきたが、今は、韓国が絶えず歴史を誇張するとして、「韓国疲れ」の症状を訴えている。

 ホワイトハウスの高官らは、こうした問題にもかかわらず、米国、日本、韓国は、対北朝鮮政策で引き続き連携して対処しているし、10月には合同軍事演習を実施したと指摘する。

 だが、米国の元高官らは、中国が力を誇示している時に、日韓の緊張は地域における影響力を強固にしようとする米国の取り組みを弱める恐れがあると話す。
 「2つの同盟国が協力していないことが我々の軍事リスクを高めている」。
 ハーバード大学教授で、クリントン政権で政府高官を務めたジョセフ・ナイ氏は、北朝鮮に言及してこう述べた。

 共和党政権時代に国防総省と国務省で高官を務めたリチャード・アーミテージ氏は、韓国にとって主要な問題は、戦時中に売春婦として無理やり働かされたいわゆる「慰安婦」に関する日本側の発言だと述べた。

 「1週間後に日本の政治家の何か愚かな発言によってばつの悪い思いをするかもしれない時に、どうして首脳会談ができるのか、というのが朴大統領の考えだ」
とアーミテージ氏は言う。

 2011年12月に行われた前回の日韓首脳会談では、日本が「慰安婦」制度に対してもっと十分な償いをする必要があるとの見解を巡って、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領と野田佳彦首相との間で意見の相違があったことが暗い影を落とした。

 峨山政策研究院の9月の世論調査では、韓国人の62%が日本を軍事的脅威と見なしていた。

■米国が韓国にあまり強く圧力をかけると・・・

 米国は、韓国のより融和主義的な姿勢を期待しているかもしれないが、再考を求める圧力は、日韓双方が領有権を主張する独島を巡ってくすぶっている米国に対する怒りに火を付ける危険がある。

 日本で竹島として知られる島嶼に対する主権は、太平洋で第2次世界戦争を終結させた1951年のサンフランシスコ講和条約によって未解決の状態に置かれた。

 「米国はこの問題の単なる傍観者ではない。
 独島の状態は、意図的にグレーゾーンに置かれたのだ」
とソウル国立大学のチョン・ジェホ教授は言う。
 「朴槿惠大統領は、日本に理性的になるよう求めているだけだ」

 米国は、自国のアジアへのコミットメントに関する問題に直面しており、スーザン・ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官は20日にワシントンで行ったアジア地域に関する講演で、この認識に反論しようとした。
 「アメリカ合衆国は長期にわたって、信頼できる状態で、絶えず、強く、しっかりとそこにいる」
とライス氏は話していた。

By Richard McGregor and Simon Mundy
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朝鮮日報 記事入力 : 2013/11/26 08:19
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/11/26/2013112600457.html

NYタイムズ「韓日関係の悪化、米外交戦略の障害に」
米国の外交、アジアに中心軸を移動
中国けん制のため日本の軍備拡張を支持…軍国主義に敏感な韓国刺激

 米日刊紙ニューヨーク・タイムズは24日、歴史問題をめぐり冷え切っている韓日関係が米国のアジア外交・安保政策で新たな頭痛の種になっている、と報じた。
 同紙は「このところ最悪の状況に陥っている韓日の確執は、オバマ政権の外交戦略である『アジアへの中心軸移動(Pivot to Asia)』に大きな障害となっている」と伝えた。

 その上で、同紙は韓日関係の対立が深まっている原因は大きく分けて二つあると分析した。
 
一つは、米国は「アジアへの中心軸移動」政策を通じて中国をけん制するため日本の軍備拡張を支持しているが、そうすることで日本の軍国主義回帰に敏感な韓国を刺激したというものだ。

 もう一つは、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と安倍晋三首相という両国新指導者の個人的な経歴が韓日関係でもめる一因となっているというものだ。
 同紙は
 「安倍首相は長い間、第2次世界大戦のころの日本の歴史を肯定的に描写しようとしてきた右派。
 首相就任前から戦犯として逮捕された祖父の潔白を証明しようと意欲を燃やしてきた」
と伝えた。
 朴大統領については
 「父親は韓国が日本に支配されていた時期に日本軍将校を務めた経歴があり、その後軍部支配者にもなった朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領。
 常に『日本とつながりがあった父親と距離を置け』という圧力を掛けられている」
と分析した。

 同紙は
 「麻生太郎副総理が今年2月に朴大統領就任式のためソウルを訪れた時『靖国神社と米国のアーリントン国立墓地は本質的に差がない』と述べたが、朴大統領はこの発言に激怒した。
 ワシントンの政界関係者は最近の韓日関係悪化の責任を『危険な国粋主義者』とされる安倍首相のせいにするが、9月の朴大統領とチャック・ヘーゲル米国防長官の会談後は雰囲気が変わってきている」
と書いている。
 日本に対する韓国の強硬姿勢も韓日関係の確執を招いているという意味だ。

 韓国政府は歴史に対する日本政府の広範な謝罪を要求しているが、日本政府が元慰安婦たちに対し正式補償することを安倍首相が受け入れるのは難しいだろう、と同紙は見ている。

 韓日関係の確執について、米国は困り果てている様子だ。
 米国家安全保障会議(NSC)のエバン・メデイロス・アジア上級部長は24日付朝日新聞のインタビューで
 「(韓日関係の悪化は)自分の家族がけんかをしているようなものだ。
 国民感情に触れる微妙な問題だが、外交で解決できる」
と述べた。

 米国務省のダニエル・ラッセル次官補(東アジア・太平洋担当)は
 「歴史問題に端を発する韓日の緊張関係は米国の政治的負担として作用している」
と述べた。