2013年11月20日水曜日

「ハイテク大国」の日本で、なぜ紙の新聞が読まれ続けているのか:

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●19日、新メディアの台頭を受けた欧米の紙媒体は今年、相次いで断末魔の悲鳴を上げている。この業界全体を襲う不況のなか、日本の紙媒体は、まるですでに「免疫」が出来ているように見受けられる。


レコードチャイナ 配信日時:2013年11月20日 14時51分
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「ハイテク大国」の日本で、なぜ紙の新聞が読まれ続けているのか―中国メディア

 2013年11月19日、新メディアの台頭を受けた欧米の紙媒体は今年、相次いで断末魔の悲鳴を上げている。
 この業界全体を襲う不況のなか、日本の紙媒体は、まるですでに「免疫」が出来ているように見受けられる。
 日本の街角や路線バス、地下鉄の中では、依然として手に新聞を持って読んでいる人をいたるところで見かける。
 スマートフォンやコンピューター・タブレットの台頭が西欧のメディア業界全体の経営モデルの見直しを迫るなか、ハイテク大国と呼ばれる日本には、この現象がまるでまだ到来していないように見える。
 新京報が伝えた。

 深セン大学伝播学院の辜暁進(グー・シャオジン)教授が今年2月に発表した文章で取り上げているデータによると、
 2012年1月から6月の読売新聞朝刊の発行部数は約993万部で、日本および世界第1位の発行部数を誇る。
 2位は朝日新聞で、朝刊の発行部数は約767万部。
 夕刊まで加えれば、この数字はもっと増加する。
 日本の主要新聞はこれまでも圧倒的な発行部数を誇ってきた。
 世界で初めて発行部数1000万部を超えたのも、今に至るまでその発行部数を保持し続けているのもすべて日本の新聞だ。
 世界新聞協会(WAN-World Association of Newspaper)が2010年に発表した発行部数ランキングによると、
 トップから25位までのうち、トップ5を日本の新聞が独占している。

■新聞を読むことが、生活スタイルとなっている日本

 発行部数と収入を支えているのは購読者である。
 日本新聞協会の2012年のデータによると、日本人1000人の中で新聞を購読しているのは478人で、読売新聞と朝日新聞の2大新聞はそれぞれ18%と14%の家庭に普及している。
 また、日本の2012年の主要な新聞は計118紙で、家庭1世帯あたり0.88部の新聞を購読していた。
 このように読者の膨大な需要がある日本は「新聞大国」と言っても決して言い過ぎではない。

 デジタル全盛時代の現在、日本の大衆はなぜ新聞に対して今でも忠誠であり続けるのか?
 今年9月に発表された記事で、東京大学大学院情報学環教育部の林香里教授はその主な要因について、
 「ある一定の年齢に達した日本の大人にとって、新聞は情報を得るメディアだというだけでなく、生活スタイルの重要な一部分になっている」
という見方を示した。

 日本人が新聞を好むのは、特に外国人にとっては、すでに日本社会を象徴する文化的な光景となっている。
 ある人は冗談のように、日本の地下鉄の早朝では、2種類のタイプの人たちの姿しか見られないと言う。
 時間を惜しんで居眠りする人と、新聞を読む人だ。
 東京や横浜のような大都市では、多くのサラリーマンは郊外に住んでいる。
 このため通勤する人は地下鉄で長い時間を過ごさなければならない。
 この時間、新聞を読むことが主な通勤時間の過ごし方となっている。

 大阪に留学をしている宋(ソン)さんは日本の地下鉄で新聞を読む人々のことが深く印象に残っていると話す。
 「地下鉄の中では、いつでも手に新聞を持った、パリッとしたスーツを着た通勤族の人たちを目にすることができる。
 新聞の一面を広げると隣にいる人に迷惑をかけるので、立ちながら新聞を読んでいる人は新聞を小さく折りたたんで読んでいる。
 早朝の地下鉄や、通常のカフェ、図書館の中でも新聞を読んでいる人をたくさん見かける。
 休みの日でも、公園で新聞を読んでいる人を見かける」。

 日本の電機メーカーに勤めている小野さんは、家で毎日新聞を購読しているという。
 その理由について、
 「私が生まれる前から、家では毎日新聞を購読していた」
と説明する。
 小野さんは、
 「日本人はメディアと言えば、まず5大新聞を連想し、テレビはその次だ。
 これは恐らく世論における新聞の発言権に関係している。
 日本の新聞はそれぞれの政治的立場が分かれており、左寄り、中道、右寄りとすべて存在する。
 多くの日本人が新聞を読む大きな要因は、新聞と自分の政治的立場が近いと、自分の声を代表しているように思えるからだ。
 私は読売新聞や産経新聞は読まない。
 なぜならこれらの新聞はあまりにも右寄りだからだ」
と説明した。

■全国津々浦々にまで行き渡っている新聞の販売ネットワーク

 明治大学の情報マーケティング学部の非常勤講師は、日本の新聞の出版方式は非常に特殊であるという見方を示しており、これが日本の新聞の発行部数が時流と逆行している大きな要因であると語る。
 「日本の新聞は非常に強大な販売ネットワークに依存している。
 短い時間内で新聞を購読者の手元に届けるというこの販売システムはスタンドで新聞を販売する他国のシステムとは大きく異なっている」
と指摘する。
 朝日新聞社の秋山耿太郎会長は2009年に中国の経済紙「金融時報」のインタビューに応えて、
 「日本の最北の稚内から南の離島に至るまで、我々は販売店2600カ所と販売員7万人を擁している。
 このような大規模な販売ネットワークを備えているので、新聞の発行部数はそこまで簡単に減少しないと考えている」
と語っている。

 大部分の販売店は専用の新聞と単独契約を結んでおり、新聞社の販売部と協力をして、出来る限り迅速に新聞を各家庭に送り届ける。
 販売員は新聞を配達する前に、新聞の中に広告を折り込むことで、収入を増やしている。
 読売新聞は独自のプロ野球チームを持ち、販売員はプロ野球の試合の無料チケットを購読者にプレゼントすることもある。

■地域社会が新聞を読む習慣を形成する

 林香里教授は、日本では個人と地域社会の密接な関係性も購読者が新聞購読を止めない重要な要素の一つとなっているという見方を示す。
 多くの日本人がある新聞に対して忠実な購読者であり続けるのは、ごく単純に購読者の家族がずっとその新聞を購読しているからという理由やたまたま居住地域の販売員を知っているという理由にほかならない。

 明治大学の情報コミュニケーション学部の非常勤講師は、
 「日本の新聞が今なお膨大な発行部数を誇っているのは、販売システムのほかにも、日本の新聞が読者からの深い信頼を得ていることや一部地方紙がその土地の地域社会との関わり方を極めて重視していることなども関係している」
という見方を示している。
 2011年3月11日の東日本大震災が起きた後、宮城県の地元紙、石巻日日新聞社は津波による被害を受けたため、電気が絶たれて新聞を発行することができなくなった。
 そこで新聞社の記者たちは、購読者を失わないようにするため、手書きの新聞を発行し、自ら避難所を駆け回り、手書きの新聞を購読者の手元に届けた。

 日本では、新聞の役割は新聞メディアというだけに限らない。
 第2次世界大戦後、日本の高度経済成長の都市生活において、新聞配達という職業はずっと重要な位置を占めてきた。
 地方から都市へと高等教育を求めてきた多くの若者が、学生時代にアルバイトとして新聞配達員を務めて学費を稼いだ。
 その中で、多くの人が大学を卒業し、都市に生活の根を下ろした。
 このような特殊な経歴が、恐らく50歳以上の日本人(特に地方から都市に出てきた人)の間で、新聞が今でも非常に重要な存在である要因の一つとなっている。

 第2次世界大戦後、新聞配達員は地元地域として各種地域サービスを行うだけでなく、時には政府の機能が及ばない空白分野を埋めてきた。
 そして、これが日本人がなかなか新聞購読をやめない理由の一つとなった。

 現在、日本の大学生の間では、新聞配達はすでに人気のアルバイトではない。
 実際、新聞配達の仕事に従事する人の数はこの20年間で75%も減少した。
 しかし、新聞販売店は自分たちの地位を安定させる新しい方法をずっと模索し続けている。
 例えば、日本の過疎化が進む農村では、高齢化が大きな問題となっている。
 販売店は高齢者に車椅子をレンタルするサービスを行ったり、定期的に一人で暮らす高齢者を訪問して、高齢者の生活状況を確認したり、高齢者が健在かどうかを見守ったりなどしている。

 非常に強大な販売ネットワークを有するほか、日本人の高い識字率も新聞の購読と深い関係がある。
 日本の教育は非常に普及している。小・中学校の教育費は無料で、高校教育を受ける人は総人口の96%、大学に進む人も総人口の36%を占めている。
 日本の新聞も子供の新聞に対する感情を育てることを非常に重視している。
 日本の小学校と中学校の大部分には専門に情報教育指導員を雇用し、小さい頃から学生に対するメディア啓蒙教育を行っている。
 また、学生たちに自分たちで学校行事の新聞を作成することを指導し、これによって学生は入学後に新聞と深い関わりを持つことになる。
 さらに日本の各主要新聞は新聞を中学の授業の教材に導入することで、新聞の影響を拡大させている。
 産経新聞のコラム「読者の声」では、1週間に1、2度小・中学生の文章を掲載している。

(提供/人民網日本語版・翻訳/MZ・編集/武藤)



「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年11月25日
http://japanese.china.org.cn/life/2013-11/25/content_30697927.htm

 購読しないと見下された? 日本人にとって新聞とは

 「最近の日本人は、地下鉄やバス、あるいは路上で新聞を読むか。」
 この問いに対して、日本に行ったことがある人も筆者の日本の友人も、皆「はい」と答えるだろう。
 ニューメディアが世界を席巻する中、なぜ日本だけにこれほどまでに強い“免疫力”があるのだろう。
 なぜ日本人は新聞を読み続けるのだろう。
 そんな疑問を抱え、筆者は日本を代表する全国紙の一つ「読売新聞」の加藤隆則中国総局長を訪ねた。

■発行部数の95%が定期購読

 加藤氏は1988年に「読売新聞」に入社し、新聞業界で25年勤めた。
 この業界で働く人の職業病なのか、簡単な質問にも加藤氏は分厚い資料を準備していた。
 そして会話が少し進むたびに資料のページをめくり、指で指し示すのだった。

 「読売新聞」は1874年に創刊した新聞社で、現存する日本の新聞で最も古い。
 総発行部数は1000万部で、その規模は世界最大だ。

 「読売新聞」の6割の収入が新聞の販売で、2割が広告収入、その他は不動産収入などとなっており、全発行部数のうち約95%が定期購読だ。
 これほどの規模の発行部数を維持するのは容易なことではないだろう。

 「読売新聞」は日本全国に7400ヶ所の販売店を有し、そこで約9万人が働いている。
 加藤氏が入社した当初も、そうした販売店で研修を行い、配達員とともに仕事をしていたという。  

 「仕事はとても大変でした。早朝2時3時には起きて、新聞に広告を挟み配達用意を始めます。
 大体6時ぐらいには配達を終え、一息ついて新しい定期購買者の開拓に励みます。
 お昼の12時をすぎると次は夕刊の準備です。」
 かつては経済的に苦しい家庭の学生が配達員をすることが多く、新聞社から奨学金をもらっていたと加藤氏は話す。

■巨大な発行部数が生み出した新聞への思い入れ

 60年代から70年代にかけて、日本の新聞業は大きな発展の時期を迎え、巨大な発行部数は日本人の新聞に対するある種の思い入れを培った。
 当時もし新聞を購読していない家庭があれば、「あの家、新聞もとってないの?」と見下されていたと加藤氏は振り返る。

 当時新聞社の競争は非常に激しく、配達員が山のように粗品を積んで
 「購読しませんか?購読すれば無料でついてきますよ!」
と家々を回った。
 契約を結べば洗濯機がもらえるということもあった。
 また、他社の販売員の“邪魔”が入らないよう退職した警官を雇うこともあったという。
 こうした独自の発行方式が、日本の新聞の群を抜く発行部数を維持したのである。

 しかし、加藤氏は「巨象は身体の向きを変えるのも遅い」と懸念も示す。
 「大きな販売体制は、変革するにも時間がかかる。
 販売店の状況も考慮していかなければならないため、ネットの発展には慎重に対応していく」
と話す。
 現在「読売新聞」の記事の60%はネット上で閲覧が可能で、新聞を購読している人だけがすべての記事を読むことができる。

■「文字文化」の伝承

 発行部数こそ多いものの、日本で新聞学を設ける大学は多くはない。
 加藤氏の同僚もほとんどが新聞学以外の専門の卒業生だという。

 「日本の新聞社は記者の育成を惜しまないので、記者が恩返しをするのも当然」
と加藤氏は語る。
 「読売新聞」に入社したての新米記者は、地方に派遣され5年間の修行を積む。
 そしてその修行は、往々にして警察官の取材から始まるという。
 警察官は記者を相手にしないことが多く、取材が難しいからだ。
 警察官と仲良くなるため、記者はさまざまな手を打つ。
 たとえばその警察官の誕生日を突き止めると、当日の朝その警察官のもとへ行って、
 「おはようございます。誕生日おめでとうございます」
と伝える。
 あるいはその警察官の自宅前でわざと道を尋ね、翌日にまたその警察官のもとへ行って、
 「昨日道を尋ねた者です。助かりました」
と言う。
 三日目にまたその警察官に会いに行って、「実は私、記者なんです」と告げると、警察官は思わず笑みを浮かべるという。

 記者たちは地方での数年間の修行を経て、再度東京に戻り、改めて各部署に配属され、また新人として働く。
 「この業界で最も大切なのは経験で、経験のある人が最も貴重なのです。」
 「日本において記者の収入は高くはありませんが、社会的地位は高い」
と加藤氏は考える。

 日本の新聞社は「文字文化」を伝えるべく、記者を学校に派遣し授業をしたり、児童向けの週刊誌を刊行するなど、さまざまな取り組みを展開している。
 「『文字文化』を伝承する上ではまだまだ努力が必要です。そう簡単に捨ててはならない」
 と加藤氏。
 「文字文化」を伝えていくことは公益活動であり、新聞が未来永劫存続していくことを意味するのだ。





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