●今回の役員人事では、グループ内でも一人勝ちが続くサムスン電子が圧倒的な存在感を見せた〔AFPBB News〕
朝鮮日報 記事入力 : 2013/12/03 09:03
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/03/2013120300592.html
韓国上場企業、サムスン電子以外は売上高・営業益減
内需不振とウォン高で純利益減
韓国の上場企業が今年1月から9月にかけ「もうけの少ない商売」をしていたことが分かった。
上場企業全体の売上高と営業利益は前年同期に比べて小幅に増加したが、サムスン電子を除いて計算するといずれもマイナスだった。
内需不振とウォン高で大半の企業が売り上げと純利益を減らした。
■内需不振とウォン高で収益性悪化
韓国取引所と韓国上場会社協議会が2日までに、有価証券市場に上場している12月決算法人614社の業績を集計した結果、1-9月の売上高は計838兆5669億ウォン(約81兆5000億円)で前年同期比0.56%増加した。
営業利益も49兆1634億ウォン(約4兆8000億円)で同5.21%増えた。こ
れに対し、当期純利益は同12.46%減の38兆3909億ウォン(約3兆7000億円)となった。
子会社の業績を含めた連結決算ベース(495社)では、売上高は前年同期比2.13%の増となったが、当期純利益は同2.78%減少した。
企業の全般的な収益構造も悪化した。
1-9月の売上高純利益率は4.58%で、前年同期(5.26%)に比べ0.68ポイント下落した。
1000ウォンの商品を売ったときの利益が46ウォン程度に減ったことを意味する。
特に、内需不振とウォン高のあおりで代表的な輸出業種となる電機・電子(IT)、自動車、鉄鋼、石油化学、造船などの収益性が悪化した。
ウォンの対ドル相場は9月末に1ドル=1070ウォン台に上昇し、今月2日には前週末比1ウォンのウォン高ドル安となる1ドル=1057.2ウォンを付けた。
サムスン証券のキム・ヨング研究員は
「世界経済が回復局面に差し掛かっている中、
企業はひとまず生き延びるため収益性を上げるよりも在庫を減らし、規模を大きくすることに経営の軸足を置いているようだ」
と分析している。
■サムスン電子を除くと売上高・営業益もマイナス
赤字企業の割合は世界的な金融危機以降で最も高くなった。
614社のうち赤字を計上した企業は24.8%(152社)で、昨年の23.1%に比べ拡大した。
4社のうち1社は赤字を計上したことになり、世界的な金融危機に見舞われた2008年(26.1%)以来の高水準となった。
純利益を業種別に見ると、サービス(前年同期比42.74%減)、流通(同36.51%減)、通信(同19.95%減)、化学(同36.85%減)、鉄鋼・金属(同27.15%減)、運輸・装備(同8.51%減)、機械(同7.63%減)など、ほとんどが内需不振などのあおりで減少した。
一方、繊維・衣服(前年同期比95.61%増)、医薬品(同24.20%増)、電機・電子(同7.34%増)など一部の業種は黒字幅が拡大した。
現代自動車は売上高が前年同期比3.50%、営業利益は同20.26%、それぞれ減少した。
それにもかかわらず、全体的には企業の業績が大きく悪化していないように見えるのは、サムスン電子が海外市場で快走を続けているためだ。
サムスン電子の1-9月の売上高は前年同期比13.79%増の118兆66億ウォン(約11兆5000億円)、営業利益は同25.62%増の16兆3281億ウォン(約1兆6000億円)だった。
純利益も同12.12%増加した。
サムスン電子を除くと、上場企業の売上高は前年同期比1.32%減、営業利益も2.65%減となる。
当期純利益の減少率も12.46%から22.20%に拡大する。IT業種もサムスン電子を除くと業績が悪化した。
店頭市場コスダックも状況は似ている。
621社の1-9月の連結決算は売上高が86兆6807億ウォン(約8兆4000億円)で前年同期比10.77%増加したが、純利益は2兆9710億ウォン(約2900億円)で同8.88%減少した。
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JB Press 2013.12.09(月)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39385
一人勝ちサムスン電子、グループ人事も席巻役員人事発表、新社長8人中7人占める
2013年12月2日と5日に、韓国サムスングループの年に1度の役員定期人事が発表になった。
李健熙(イ・ゴンヒ)会長(71)の次女である李敍顯氏(イ・ソヒョン=40)が社長に昇格して注目を集めた。
今回の役員人事で際立ったのが、グループ内でも一人勝ちが続くサムスン電子が、社長、役員人事で圧倒的な存在感を見せたことだ。
サムスングループ役員人事の全体像を見ると、副会長昇格者はゼロ、社長昇格者は8人、それ以外の役員昇格者は475人だった。役員人事の規模としてはほぼ例年並みだ。
■李健熙会長の次女も社長昇格、具体的な事業継承が加速
韓国メディアで最も注目を集めたのが李敍顯氏が社長に昇格し、サムスンエバーランドのファッション部門経営企画担当に就任したことだ。
李敍顯氏は、デザイン分野で有名な米パーソンズ美術大学を卒業し、これまで第一毛織でファッション部門担当の副社長を務めていた。
ファッション部門が第一毛織からグループの事実上の持ち株会社であるサムスンエバーランドに売却されるのを機に「転籍」することになった。
サムスンエバーランドの最大株主は、李健熙会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(45)。
長女の李富真(イ・ブジン)ホテル新羅社長(43)もサムスンエバーランドの経営戦略担当社長を兼務しており、3人がサムスンエバーランドに関与することになった。
サムスングループでは、李健熙会長から3人の子供たちへの事業継承作業が進行中だ。
この中で、長男と長女はすでに2012年までに、副会長、社長に昇格していた。
李敍顯氏も社長に昇格したことで、今後、「どの企業を誰が継承するか」という作業が加速するという見方が強い。
サムスングループの社長に昇格したのは、李敍顯氏を含めて8人。このうち、李敍顯氏を除く全員がサムスン電子出身者となった。
「2013年には、サムスン電子を除くとサムスングループで目立った業績を上げた会社はなかった」。
グループの広報担当社長は韓国メディアにこう説明している。
「信賞必罰」が人事の基本であるため、結果的にこんな偏った人事になってしまった。
サムスン電子出身者が7人社長に昇格したが、サムスン電子の社長が7人増えたわけではない。
サムスン電子出身者が、グループ会社の社長に転出した例も目立つ。
半導体など部品分野を歩んだ趙南成(チョ・ナムソン)氏はサムスン電子副社長から、第一毛織社長に転じた。
第一毛織は、ファッション部門を切り離して、電子素材事業へのシフトを急速に進めている。
趙南成社長はこの「企業変身」を手がけることになる。
このほか2人のサムスン電子副社長が金融部門のグループ会社社長に転じた。
元麒讚(ウォン・ギチャン)副社長がサムスンカード社長に、李鮮鍾(イ・ソンジョン)副社長が、サムスンベンチャー投資の社長にそれぞれ就任した。
■サムスン物産建設部門社長に「事業立て直し」のプロ投入
グループの社長のうち6人が今回の人事で「転籍」した。
このうち5人もサムスン電子出身だ。
このなかでグループ内外で注目を集めたのが崔治勲氏(チェ・チフン=56)だ。
サムスンカード社長からサムスン物産建設部門社長に転じた。
同氏は異色の経歴の持ち主だ。
父親は崔慶禄(チェ・ギョンロク)氏。陸軍参謀総長や交通部長官やメキシコ大使などを経て、1980年から5年間、駐日大使を務めた。
本人も幼い頃から教育を海外で受けた。
米ジョージ・ワシントン大の経営大学院を終了後、1980年代半ばにサムスン電子に入社したが、すぐに退社する。
その後、約20年間、ゼネラル・エレクトリック(GE)で勤務し、航空機エンジン部門のアジア地域社長などを歴任後、2007年に二十数年ぶりにサムスン電子に「復職」した。
崔治勲社長は、サムスン復帰後、プリンター事業やカード事業など、「立て直しが必要な事業」を転々としながら、次々と実績を上げていく。
「サムスン流」にこだわらない手法で、短期間で成果を上げたことでグループ全体で注目を浴びた経営者だ。
今回、崔治勲社長が挑むのは、サムスングループでも最大の問題になっている建設部門の立て直しだ。
国内の建設不動産景気の後退に加えて、これを挽回するために数年前から急拡大させた海外プロジェクトの不振で、サムスングループでも建設部門は「立て直しが待ったなし」の状況だ。
崔治勲社長は、サムスン物産の建設事業のリストラを進めるだけではなく、海外工事の「赤字受注」で巨額の赤字を計上しているサムスンエンジニアリングなどグループ全体の建設事業の再建にも関わることは必至だ。
サムスングループ内では、「いずれ、サムスン物産の建設部門とサムスンエンジニアリングとの合併も必要なる」との見方も強く、こうした「力技」に対する期待も高い。
先に触れたように、今回の人事では金融グループの社長の大規模な交代劇があった。
サムスン生命保険、サムスン火災海上保険、サムスンカードの中核3社の社長がすべて交代した。
■サムスン電子のDNAを他のグループ会社に浸透させろ
李健熙会長はかねて「どうして金融グループにはサムスン電子のような会社が出てこないのか」と不満を漏らしていた。
サムスンカード、サムスンベンチャー投資の社長にサムスン電子出身者を投入して、金融グループの雰囲気を変えたいという狙いもあるようだ。
社長クラス以外の役員の昇格者数は475人。
副社長昇格者51人、専務昇格者93人、常務昇格者331人だった。
●スマートフォンが牽引役となり、サムスン電子は驚異的な業績を上げ続けている〔AFPBB News〕
475人の昇格者のうち226人がサムスン電子から出た。
全体に占める比率は47.5%。ほぼ2人に1人の役員昇格者をサムスン電子が占めることになった。
サムスングループ内ではここ数年、「サムスン電子のDNAを他のグループ会社に浸透させる」という言い方をよく聞く。
具体的に何を指すのかはいま一つ不明だが、圧倒的な業績のサムスン電子から学ぼうという趣旨なのか。
サムスン電子出身の役員の他のグループ会社への転出がますます増えることだけは間違いない。
今回の人事で興味深かったのは、475人の社長クラス以外の昇格者のうち、150人が「経歴社員採用組」だったことだ。
サムスングループは2000年代前半までは「純血主義」で有名だった。
新入社員時代から「サムスン式」に染め抜き、その中から優秀な人材を役員に登用するというのがお決まりのパターンだった。
だが、2000年代半ば頃から、世界中で優秀な「経歴社員」の採用に乗り出した。
150人の役員昇格者が出たということは、この採用に一定の成果が上がっていることと言えるかもしれない。
■「キープヤング」の人事は健在
サムスングループは今でも役員の出勤時間は午前6時半だ。週末も勤務する役員は多い。
人もうらやむ高額報酬とはいえ、本当によく働く。
さて、どの会社よりも猛烈に働くサムスングループの役員は一体、何歳なのか。
今回の8人の社長昇格者の平均年齢は54歳。
オーナー家以外でも1962年生まれの社長が出た。
社長以上の「社長団」の平均年齢は57.7歳という。
50代半ばで社長に昇格するとすれば、40代後半か50歳前後では副社長になっている必要がある。
「キープヤング」の人事は健在である。
玉置 直司 (たまき・ただし)Tadashi Tamaki
日本経済新聞記者として長年、企業取材を続けた。ヒューストン支局勤務を経て、ソウル支局長も歴任。主な著書に『韓国はなぜ改革できたのか』『インテルとともに―ゴードン・ムーア 私の履歴書』(取材・構成)、最新刊の『韓国財閥はどこへ行く』など。2011年8月に退社。現在は、韓国在住。LEE&KO法律事務所顧問などとして活動中。
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