2014年1月12日日曜日

「美しい韓国経済の終わり(2)」:2014年サムスン会長の楽観論の消えた新年訓示

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●スマホまではうまく稼ぎ頭を入れ替え、利益を急増させてきたが・・・(写真は曲面ディスプレーを採用したスマートフォン「ギャラクシー・ラウンド」)〔AFPBB News〕


JB Press 2014.01.10(金)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39630?page=5

2014年韓国財閥総帥のキーワードは?
危機、革新、スピード――楽観論消えた新年訓示

 韓国は旧正月(2014年は1月31日)を祝うため、年始の休日は1月1日だけだ。
 2日には、あちこちの企業で「始務式」が開かれた。
 ふだん公開の場でスピーチをする機会がほとんどない財閥総帥も、この日だけは1年間の経営目標を踏まえて訓示をする。
 2014年は「危機」「革新」「スピード」がキーワードとなった。

 1月2日。
 ソウル中心部にあるホテル新羅には続々と黒塗りの車が詰めかけた。
 サムスングループの旗艦ホテルで毎年恒例の「新年祝賀式典」が開かれるためだ。

 式典には、李健熙(イ・ゴンヒ)会長が長女でホテル新羅社長である李富真(イ・ブジン)社長に手を引かれながら姿を見せた。
 すぐ横には長男の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の姿もある。

 ホテル2階の大宴会場には、ソウル近郊に在籍するグループ役員1800人が参加した。
 取材陣も100人以上が詰めかけた。
 さらに国内外のサムスングループの拠点には通信回線を通して式典の模様が「生放送」された。

■サムスングループ李健熙会長の訓示

 最大の目玉は何と言っても李健熙会長の訓示だった。
 2014年は、あらかじめ録画した映像が会場の大型スクリーンを通して流された。

 サムスングループの中核企業であるサムスン電子は、2013年も過去最高の利益を更新したことが確実だ。
 世界のスマートフォン市場での圧倒的なシェアと堅調な半導体事業。世界シェア1位を維持したテレビ――。

 利益連動型ボーナス制度を導入しているサムスン電子は2013年末に8000億ウォン(1円=10ウォン)ものボーナスを大盤振る舞いした。

 訓示では、役員に感謝の意を伝えたが、「自画自賛」の内容などほとんどない。
 以下に紹介するように、いつもに増して「危機感」がにじみ出た内容だった。
 まずは、李健熙会長の訓示を少し長くなるが紹介しよう。


※※※※※※※※※※

 サムスンファミリーの皆さん。

 2014年の新しい朝が明けました。(略)

 昨年は世界的に低成長が続き、市場が萎縮するなかで、我々はグローバル企業と死活をかけて戦い、特許紛争も抱えることになりました。

 まったく油断もできない状況で、サムスンは投資を拡大し、技術開発に力を注ぎ、競争力を高めて良い成果を上げることができました。

 それぞれの現場で全力を挙げてくれた役員の皆さんに感謝を申し上げます。(略)

 世界各地の役員の皆さん。

 「新経営」から20年の間にグローバル市場でトップに立った事業もあり、足踏みをした事業もありました。

 トップに立った事業は常に追撃を受け、不振だった事業には残された時間などありません。

 もう一度、変わらなければなりません。

 5年前、10年前のビジネスモデルや戦略、ハードウエアに依存したプロセスや文化を果敢に捨て去りましょう。

 時代の流れに合わない思考方式や制度や慣行を振り捨てましょう。

 一歩先さえも見えない不確実性の時代の中で変化の主導権を握るためには、市場と技術の限界を突破しなければなりません。

 産業の変化に先んじることができる事業構造の革新、不確実な未来に備えることができる技術革新、グローバル経営体制を完成させるためのシステム革新に拍車をかけなければなりません。

 不況になるほどにチャンスも増えてきます。

 ライバルよりも高い場所に立って遠くを見て、新しい技術、新しい市場を開拓しましょう。

 核心事業では誰も追いつくことができない競争力を確保し、一方で、産業と技術の融合と複合化に目を向けて新事業を開拓しなければなりません。

 世界各地の拠点が1つの体のように動くことができる有機的なシステムを構築し、特に研究開発センターは24時間休むことなく頭脳を働かせることができるようにしなければなりません。

 未来に備える主役は皆さんです。
 自由に考えて挑戦を重ねることを願っています。
 人材を育て挑戦と創造の文化を植えつけるためには支援を惜しみません。

 協力会社は私たちにとって大変貴重なパートナーです。

 すべての協力会社がグローバル競争力を持つことができるように、技術開発や生産性の向上のために支援をしなければなりません。

 昨年1年の間に、大小の事故がありました。

 役職員の安全と地域社会の環境は、何事にも変えられない価値です。

 サムスンの事業場は最も安全で快適で、さらに地域社会の発展に寄与しなければなりません。(略)

 皆さん。過去20年の間、量から質へと大転換をしましたが、いまや質を超えて製品とサービス、事業の風格と価値を高めなければなりません。

 我々の高い目標と理想に向かって力強く進みましょう!

※※※※※※※※※※

 李健熙会長がこの日、最も強調したのが「革新」「変化」だ。
 「もう一度、変わらなければなりません」という言葉が最大のメッセージだろう。

 李健熙会長が父親で創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)氏の死去で2代目総帥になったのが1987年。
 その5年後に「新経営宣言」をしてグループ経営の大革新に着手した。

■「新経営」から20年経って、もう一度変化せよ

 「量から質への転換」が最大の目標で、「妻と子供以外はすべて変えろ」という有名な強烈なメッセージで業務と思考方式の転換を迫った。

 2014年の訓示は、「新経営」から20年経って、さらにもう一度変化せよ、と訴えたのだ。

■ほぼ2年ぶりの営業減益、「ポストスマホ」が見当たらない危機感

 訓示の5日後の1月7日、サムスン電子は2013年10~12月期の業績見通しを発表した。
 営業利益は8兆3000億ウォン。
 並みの企業なら四半期ベースで8300億円もの利益を上げれば「スーパーエクセレント」だが、サムスン電子から見ればそうも言っていられない。

 営業利益は前年同期比で6%、前期(2013年7~9月期)比では18%の減少になったのだ。
 業績が前年実績を下回るのはほぼ2年ぶりのことだ。

 この日の業績見通し発表ではセグメント情報は公開しなかった。
 だが、ここ数年、サムスン電子の業績を牽引してきたスマートフォンの利益額が伸び悩んだことは間違いないだろう。
 世界的に特に先進国市場でスマホの普及が一段落したことに加えて、中国勢の躍進や日本勢の巻き返しなどがあり、これまでのような「大儲け」は難しくなってきていた。

 2000年以降、サムスン電子は大躍進して世界の情報技術(IT)ハード企業で随一の勝ち組になった。
 半導体メモリー、カラーテレビ、液晶パネル、スマホと稼ぎ頭を入れ替えながら、利益を急増させてきた。

 ところが、「ポストスマホ」が見当たらないのだ。

 李健熙会長の訓示で新事業の開拓をしきりに強調しているのはこの危機感の裏返しだ。

 「スピード」も、相変わらず李健熙会長が発信し続けるメッセージだ。
 李健熙会長はここ数年、「マッハ経営」なる言葉を使っている。
 マッハ級の速度で走り続けろと言うことだ。

■短い訓示に込められた意味

 それにしても、「研究開発センターは24時間稼働」というのはすごい。
 米国やインド、中国、日本などの海外拠点と韓国の拠点を連動させて「24時間動き続ける頭脳」のシステムを構築しろということだが、これも新事業開拓に対する危機感の表れだろう。

 李健熙会長のスピーチは、スタッフが2カ月ほど前から準備して練りに練って叩き台を作る。
 これに役員が手を入れ、社長⇒副会長を経て最終的に会長が手を加える。

 だから、短いが、すべてに意味がある。

 例えば、何気なく挿入されたように見える、
 「トップに立った事業は常に追撃を受け、不振だった事業には残された時間などありません」
という個所。

 サムスングループには、2013年に赤字に陥った企業もある。
 「不振だった事業には残された時間などありません」。
 2日の式典でこのメッセージを聞いた不振企業の役員は、心臓が止まるほどの衝撃だっただろう。

 もちろん、この部分は、大規模リストラの予告と見るべきだ。
 サムスングループは2013年夏以降、事業の入れ替えなどグループ内での事業再編を進めている。
 2014年には、さらに大胆な再編が起きることも必至だろう。

 さて、サムスングループ以外の財閥の総帥はどんな訓示をしたのか。

 1月3日付の「毎日経済新聞」は、サムスン、現代自動車、SK、LGの4大財閥の総帥が「事前に打ち合わせでもしたかのように現状を危機だと認識して新事業の発掘が切実な課題だと指摘した」と報じた。

■円安ウォン高に敏感な財閥総帥、「切り札製品」の模索に躍起


●韓国企業にとっては円安ウォン高が大きな脅威

 世界的に景気回復に力強さが欠けるうえに、韓国勢にとって、何よりも気になるのが為替動向だ。
 特に、競合分野が多い日本企業にとって追い風となる円安には過敏になっている。

 2013年は、「超円高修正」から始まったが、1ドル=100円の水準からさらに円安が進むとの見方も強く、輸出型製造業が中心の韓国の財閥にとっては警戒感が強まるのは当然だ。

 だから、為替動向の影響を受けにくい「切り札製品」が是が非でも欲しいのだ。

 LGグループの具本茂(ク・ボンム)会長は
 「主力事業では、顧客が選択して市場でも認知される先進的な製品で必ずや成果を上げなければならない。
 この程度の製品ならば売れるだろうといった供給者の視角で考えるのではだめだ」
と語りかけた。

 現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)会長は、
 毎年、新年の始務式では、具体的な経営計画に触れる。

 2日にも、
 「新しい成長のための原動力を創出するために事業構造と中長期戦略を体系化し、革新的な製品と一歩先んじた技術開発に全社の力を集中する。
 2014年には前年よりも30万台多い786万台を世界市場で販売する」
と明らかにした。

 そのうえで、
 「車両の燃費と安全を強化し、環境にやさしい車、先端技術が融合したスマートカーのような分野の技術開発投資を拡大する」
と述べた。

 出遅れている燃料電池車の開発などで巻き返せと発破をかけた訓示だった。

■株式市場は不穏な幕開け

 韓国企業が一斉に業務を開始した1月2日。韓国の総合株価指数KOSPIは、前年末比40ポイント安い1967ポイントで幕を開けた。
 特に、サムスン電子と現代自動車という2枚看板企業の株価が大幅に下落した。

 かつて3大財閥の一角を占めた大宇グループの創業会長は、1995年の新年の訓示で「自動車産業に進出してさらに発展する」と宣言した。
 他の財閥総帥も、新年訓示でど派手な事業計画を打ち出し、気勢を上げた。

 もうそんな跳ね上がりの訓示など期待もできないのか。

 韓国経済の一大牽引役だったサムスン電子の減益のニュースも流れ、何となく勢いに欠ける始業になってしまった。

玉置 直司 (たまき・ただし)Tadashi Tamaki
日本経済新聞記者として長年、企業取材を続けた。ヒューストン支局勤務を経て、ソウル支局長も歴任。主な著書に『韓国はなぜ改革できたのか』『インテルとともに―ゴードン・ムーア 私の履歴書』(取材・構成)、最新刊の『韓国財閥はどこへ行く』など。2011年8月に退社。現在は、韓国在住。LEE&KO法律事務所顧問などとして活動中。



聯合ニュース 2014年 01月 13日(月)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2014/01/13/0500000000AJP20140113000700882.HTML

危うい韓国経済 サムスン・現代自に「おんぶにだっこ」

【ソウル聯合ニュース】
 サムスングループと現代自動車グループの営業利益
 韓国企業全体に占める割合が初めて30%を突破した。
 両グループに対する韓国経済の依存度が高まり、危機に見舞われた際に金融市場や実体経済の不安定さが高まる危険性を懸念する声が出ている。

 財閥情報専門サイトの財閥ドットコムは13日、資産上位10位グループの2012年の営業利益は61兆2000億ウォン(約5兆9879億円)で、韓国企業全体(141兆7000億ウォン)の43.2%を占めたと発表した。

 このうちサムスン、現代自動車グループの営業利益の合計は43兆ウォンで全体の30.4%に達した。
 両グループが企業全体に占める割合は2008年の世界金融危機後に上昇し、
 09年に19.7%、
 10年に25.2%、
 11年に24.6%となり、
 12年に初めて30%
を突破した。

 特に財界トップのサムスングループの割合が最も高かった。
 サムスンの営業利益が全体に占める割合は、
 09年の13.6%から12年に21.3%と3年間に7.7ポイント上昇
した。

 中核企業のサムスン電子の場合、企業全体に占める割合が
 09年は5.4%、
 10年は9.6%、
 11年は7.9%と10%未満だったが、
 12年に13.1%
に急上昇した。単一企業としては唯一、企業全体に占める割合が2桁をマークした。

 一方、現代自動車グループの営業利益が企業全体に占める割合は
 09年の6.1%から
 12年には9.0%
に上昇し、10%台に迫っている。

 2グループを除いた他の8グループが全体に占める割合は
 09年の19.6%から
 12年は12.8%と徐々に低下している。

 国内産業や株式市場でサムスンと現代が独走を続ける中、多様な企業や業種が発展するための土台づくりが重要だとの指摘も出ている。
 財閥依存が高まれば韓国経済や株式市場の活力が低下するためだ。

 教保証券関係者は
 「サムスンと現代が少なくとも現状を維持した上で、他の企業も成長してこそ韓国経済が活力を得ることができる」
と強調した。





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