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JB Press 2014.01.15(水)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39571
「鵜経済」の手縄外され迷走する“半開の隣国”反日の韓中を外し、親日のASEANに向かう日本企業

●反日路線を突き進む韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領〔AFPBB News〕
「私が首相を辞めた後、(首相は)一人も参拝しないが、日中問題はうまくいっているか。
外国首脳で靖国参拝を批判するのは中国、韓国以外いない」
と、政界の表舞台から消えていた小泉純一郎元首相が去る11月、日本記者クラブの記者会見で発言。
中韓メディアで再び脚光を浴びることになった。
それから約1カ月後、その時期が注視されていた安倍晋三首相が靖国神社を参拝。
2011年12月の京都会談以後、2年以上首脳会談が実施されていない日韓関係が、これで最悪の状況に陥ることは避けられない状況となっている。
■レームダック状態の朴大統領、企業や個人の破綻が急増
一方、就任以来、反日カードを掲げ続けてきた韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、現職首相では7年ぶりとなった安倍首相の靖国参拝を対日強硬路線の好機と捉え、来月に迫った就任1年を前に早くもレームダック状態の自身の続投(今後4年間)への“攻(好)カード”にする狙いだ。
しかし、その朴大統領の反日外交と内政の失策こそが韓国経済をさらに苦境に立たせていることを肝心のご本人が気づいていないところが、まさにレームダック。
主要な韓国メディアまでもが「破産共和国」などと、大統領の失策と絡め、その危機的状況に警告を鳴らしている。
それどころか、本来の対日報道姿勢からは親日・自虐的と批判されるような、日本の優位性と韓国の劣性を説いた「鵜経済」論評も展開される事態にまで発展し、韓国の経済状況はまさしく韓国版「財政の崖(フィスカルクリフ)」に差し掛かっている。
この2月で就任1周年を迎える朴大統領。
大統領の経済政策を象徴する「クネノミクス」は就任当初はもてはやされたが、いまではどこ吹く風か。
当初は市場・雇用を生み出す創造経済、中小企業優遇の経済民主化を約束したが、その成果は見られない。
それどころか、東洋グループや熊津(ウンジン)といった財閥と称されるグループ企業が次々と破綻し、企業の倒産等も増加傾向で、生き残る企業の多くも資金繰りに喘いでいるのが現状。
2013年1月から11月までの統計(「マネー・トゥデイ」調べ)では、日本の会社更生手続きに相当する法定管理申請の企業は751社で、同様に破産申請企業は423社にも上った。営業日1日当たり平均で5社が倒産という計算になり、これは統計開始の1998年以降で最多記録。
最大輸出先の中国経済の陰りだけでなく、「アベノミクス」で円安ウォン高がさらに進み、特に輸出企業の国際競争力が低下したことが要因の1つ。
また、“企業が肺炎を起せば、家計は瀕死の状態に”とばかりに、家計にも破綻の波が押し寄せている。
こちらも11月までの個人の更生手続申請は3年連続で増加し、約9万6400件に上り、3年前の倍にまで拡大、留まる余地はない。
自動車販売や流通業界等の売り上げも伸び悩み、可処分所得から消費へ回る数値比率を表す消費動向では、リーマン・ショックの際の75%をさらに下回り、72%にまで落ち込んでいる。
その数値を裏付けるものとして、全国経済人連合会による調査結果が明らかにされた。
回答した主要企業の半数が2014年事業計画での最大懸念を「内需回復の不十分性」だとし、「中国の経済成長不振」や「長引くアベノミクスによる円安ウォン高」を上回った。
■韓国は鵜匠の日本においしいところを取られる鵜?
内需不振への経済対策という緊急課題を抱えながらも、何も手立てを打ち出せず、反日路線を突っ走る朴大統領の政治手腕への不信感は国内でも拡大している。
最近では、日本の最先端技術への優位性と韓国の脆弱な産業構造に切り込む異例の報道や研究発表が相次いでいる。
都市部のインテリ層に読者が多い韓国の週刊誌「時事ジャーナル」は、「日本から調達部品がなくなるとき、現代自動車とサムスンの工場がストップする」という記事を掲載。
「半導体などの素材、製造装置は日本から輸入されていて、“韓国製”とは言い難い」
「日本製品は小型モーターでも優位に立つ」
「『SAMSUNG』や『LG』と表示しても、スマートフォンなどに搭載する二次電池の肝心な中身は日本の素材」
「工場などの機械やコンピューターも日本製部品なしには生産中止」
と、テレビ、半導体、スマホで世界市場を席巻しても、中身の「Made in Japan」に頼らなければ、何も製造できないといった論評を展開している。
「韓国製」の成長も一部見られるが、液晶画面に不可欠な偏光板保護フィルムを代表とする分野等では日本企業の部品や素材が優勢で、2011年の東日本大震災時に、世界のハイテク市場の生産が止まったことでも日本への依存度は証明済みだ。
日本の技術に依存し、
「韓国が魚は捕まえるものの、結局、鵜匠である日本がその魚を賞味する」
とした「鵜経済」が長年蔓延し、輸出で獲得する利益は実質的には日本が得ており、今の韓国の産業界はそこから脱出するすべを持たず、将来的には、消えてなくなってしまうとする危機感を抱いている。
今までであれば、こうした論評は親日的と却下され、批判を受けるだけだったが、“嫌日流”を押し続けた結果、韓国経済の危機を助長している朴大統領の政治手腕に産業界や社会から大きな懸念がうねりとなって出てきている表れだ。
韓国には先端部品などの特殊技術や技能を蓄積した中小企業網がない。
また、明治時代から技術革新を行ってきた日本のような、息の長い「ものづくり精神」が産業社会に根付いていないのも企業や産業界が危機感を募らせる要因の1つになっている。
韓国経済は輸出が下支えしているが、前述のように「内需不振」が続き、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が発効されれば、日本からの輸入が拡大し、経済指標がさらに悪化するという懸念も見え隠れする。
■企業の「韓中離れ」を如実に示すJBICの調査結果
中国から低コストの部品や素材で追い上げを受ける一方、日本からは最新技術の素材や部品で水をあけられるという逆境に直面する韓国。
しかし、そうした経済的お家事情に見向きもせず、今や安倍首相の靖国参拝を反日路線の“起爆剤”として政治利用しようとする韓国政権に、日本企業がもはや見切りをつける動きがすでに出てきている。
国際協力銀行(JBIC)が先の11月発表した「日本の製造業の投資有望地域・国ランキング」では、1989年の調査開始以来、
首位を固守してきた中国が初めて4位に転落、
韓国もさらに順位を下げ過去最低の13位
となった。
ランキングは同銀行が例年、海外事業を展開する国内製造業の企業に対し、海外直接投資について調査実施しているもので、2013年は625社が回答。
「今後3年程度の中期的投資が有望な国や地域」を列挙する中で、インドネシアを挙げた企業が219社に上り、前回の首位から4位に脱落した中国を横目に、初めて3位から首位に躍り出た。
首位のインドネシア以下、インド、タイ、中国、ベトナムと上位にASEAN諸国が入り、フィリピンやミャンマーも昨年より順位を上げ、ASEAN加盟の10カ国のうち、ブルネイを除く9カ国が初めて20位以内に入る大躍進ぶりだ。
一方、これまでの首位からASEAN諸国に抜かれ4位に転落した中国だが、
前回調査で「中国が有望」とした企業で、今回も引き続き有望国とした企業数も、昨年度調査(319社)から183社に激減。
その理由として、「労働力のコスト上昇」を挙げた企業が最も多かった。
また、法制度の不透明な運用といった従来の理由以外に特筆すべきは、昨年の調査と比較し、「治安や社会情勢不安」を挙げた企業が3倍にも膨れ上がっていることだ。
特に、尖閣諸島問題などでの将来的な反日や不買運動への企業側の懸念もさらに高まっていることが明らかになった。
また、中国と“嫌日流”で反日同盟を組む韓国も、このところ毎年のように投資先としての魅力に陰りを見せ、今回は13位と過去最低にまで後退、フィリピン、ミャンマー、マレーシアにも追い越された。
東日本大震災直後は、電力供給確保で韓国などに生産拠点を動かす日本企業もあった。
しかし、円高ウォン安からも解放され、韓国自身が深刻な電力不足を露呈した結果もあるが、やはり朴政権の強硬な反日路線への拒絶反応が大きく影響している。
加えて、解決済みとされていた戦時徴用について韓国の裁判所が三菱重工などの日本企業への賠償判決を下すという異例の事態も重なって、
韓国への直接投資は前年度比で「40%減」と大きく減少した。
■韓国の代表的保守紙が自国を「半開の国」だと警鐘を鳴らす
今後、日本企業が“韓国はずし”を進め、
親日的で、新興国としての成長が大きく期待できるASEAN諸国と、経済的だけでなく南シナ海の領有権などの政治・安全保障分野でも緊密化することは明白だ。
その布石として、靖国参拝前に安倍首相は、12月中旬に開催された日本とASEAN諸国との一連の首脳会議で、総額2兆円に及ぶ途上国援助(ODA)や円借款締結を表明。
2015年のASEAN経済統合も見据え、対ASEAN外交の円熟を内外にアピールした。
一方、韓国では朴大統領の支持率がここに来て急落している。
年金政策の撤回などの公約不履行に始まり、国の情報機関による大統領選介入問題などの国内問題が大きな背景だが、企業や家計の破綻の急増による経済課題への失策への批判も大きい。
12月20日に韓国ギャラップ社が発表した世論調査結果によると、朴氏の支持率は48%。
9月の67%から3カ月足らずで20ポイントも急降下。
韓国政界では大統領の辞任を求める声も出てきている。
長期化する鉄道ストライキなどの内政問題だけでなく、日韓問題、直近では北朝鮮の張成沢前国防副委員長処刑で緊迫する朝鮮半島情勢など、内憂外患で難題山積だ。
中でも韓国にとって重要なことは、日韓関係を修復することだ。
「日本型デフレの兆候」を指摘する声もあり、韓国経済は長期低落への一途を辿る危険性を孕んでいる。
9月に中央日報で、こんな論調を目にした。
「新興国がうらやむ韓国は、携帯電話、自動車、造船など応用経済の寵児のほかに革新商品を出したことがない。
国家競争力は下落の一途だ。
ヘリテージ財団は31位から34位に、世界経済フォーラムでは19位から25位に落ちた。
この最も大きな原因は、領域別の格差にある。
製品(ハードウエア)は最上位圏なのに、制度(ソフトウエア)は最下位圏。好戦的労組、政府規制、政治不信、硬直した雇用体制においてはブラジル・インドにさえ及ばないという評価は今さらのことではない」
とした上、
「ハードウエアに邁進してきた『半開の韓国』が必ず肝に銘じて再確認すべき見本なのだ。
制度革新が文明開化の目標であるとすれば、韓国はまだ半分しか開花していない『半開の国』なのだ」
1965年創刊の日刊紙である中央日報は、朝鮮日報、東亜日報と並び、保守系紙として知られるが、この現実主義的な論調は、韓国の国益を損ねる朴大統領への危機感の表れとも取れる。
ソウル大学教授の宋虎根(ソン・ホグンル)氏によるこの論調をお借りすれば、
今の韓国は、日本からの「鵜経済」の手縄(たなわ)が外された「半開の国」
ということになるのだろうか。
末永 恵 Megumi Suenaga ジャーナリスト
米国留学(米政府奨学金取得)後、産経新聞社入社。産経新聞東京本社外信部、経済部記者として経済産業省、外務省、農水省記者クラブ等に所属。 2001年9月11日発生の同時多発テロ直後に開催された中国・上海APEC(アジア太平洋経済協力会議、当時・小泉純一郎首相、米国のブッシュ大統領、 ロシアのプーチン大統領、中国の江沢民国家主席等が出席)首脳会議、閣僚会議等を精力的に取材。
その後、大阪大学特任准教授を務め、国家プロジェクトのサステイナビリティ研究(東大総長の小宮山宏教授《現・三菱総合研究所理事長・東大総長顧問》をトップとする)に携わり、国際交流基金(Japan Foundation, 外務省所管独立行政法人)の専門家派遣でマラヤ大学(客員教授)で教鞭、研究にも従事。
政治経済分野以外でも、タイガー・ウッズ、バリー・ボンズ、ロサンゼルス五輪組織委員会のユベロス委員長、ダビ・フェレール、錦織圭などスポーツ分野の取材も行う。マレーシア外国特派員記者クラブ所属。
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